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重症筋無力症(MG)

【概念】

重症筋無力症(MG:Myasthenia Gravis)は、神経筋接合部の異常による自己免疫性疾患です¹。アセチルコリン受容体(AChR)、筋特異的キナーゼ(MuSK)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質4(Lrp4)などに対する自己抗体により、神経筋接合部での信号伝達が障害されます¹。胸腺異常(胸腺過形成、胸腺腫)を合併することが多く、発症年齢により早発型(50歳未満)と遅発型(50歳以上)に分類されます²。

【頻度】

MGの有病率は人口10万人当たり約15-20人とされています¹。発症は二峰性を示し、20-30歳代の女性と50-60歳代の男性に多く認められます。全体の男女比は約1:1.5で女性にやや多いとされています¹。

【症状】

易疲労性と日内変動を特徴とする筋力低下を呈します¹。眼症状(眼瞼下垂、複視)で発症することが多く、約85%の患者で認められます。進行すると球症状(構音障害、嚥下障害)、四肢筋力低下、呼吸筋麻痺を来します¹。眼症状のみの眼筋型MGと、眼症状以外の症状を伴う全身型MGに分類されます¹。MuSK-MG では球症状が強く、呼吸筋や頸部筋の障害が目立つ傾向があります²。クリーゼ時には呼吸不全により生命に危険が及ぶことがあります¹。

【検査】

診断は臨床症状、薬理学的検査、電気生理学的検査、血清学的検査により行います¹。エドロホニウム試験(テンシロンテスト)では、短時間の症状改善を認めます。反復刺激検査では3Hz低頻度刺激で10%以上の振幅減衰を認めます¹。血清抗体検査では、抗AChR抗体(約85%)、抗MuSK抗体(約5%)、抗Lrp4抗体(約1%)を測定します¹。胸部CT・MRIでは胸腺過形成や胸腺腫の検索を行います¹。単線維筋電図では神経筋接合部の異常(jitter増加)を高感度で検出できます²。

【治療】

対症療法として、コリンエステラーゼ阻害薬(ピリドスチグミン)を使用します¹。免疫療法として、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)が第一選択薬です¹。ステロイド抵抗例や副作用軽減のため、免疫抑制薬(アザチオプリン、タクロリムス、シクロスポリン)を併用します¹。急性増悪に対しては血漿交換療法、免疫グロブリン大量静注療法を行います¹。胸腺摘除術は、胸腺腫合併例では必須で、AChR-MG患者では若年者を中心に推奨されます¹。2023年より補体阻害薬(エクリズマブ)、2024年よりFcRn阻害薬(エフガルチギモド)が使用可能となり、難治例に対する新たな治療選択肢となりました3。MuSK-MGに対してはリツキシマブ(抗CD20抗体)が有効とされています²。

引用文献:
  1. 重症筋無力症診療ガイドライン作成委員会. 重症筋無力症診療ガイドライン2014. 南江堂, 2014.
  2. Kaminski HJ, Sikorski P, Coronel SI, Kusner LL. Myasthenia gravis: the future is here. J Clin Invest. 2024;134(8):e179742.
  3. Iorio R. Myasthenia gravis: the changing treatment landscape in the era of molecular therapies. Nat Rev Neurol. 2024;20(2):84-98.
  4. Gilhus NE, Andersen H, Andersen LK, et al. Generalized myasthenia gravis with acetylcholine receptor antibodies: a guidance for treatment. Eur J Neurol. 2024;31(4):e16229.
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