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パーキンソン病

【概念】

パーキンソン病は、中脳黒質のドパミン神経細胞の変性・脱落により生じる進行性の神経変性疾患です¹。病理学的には、αシヌクレインの蓄積によるレビー小体の形成が特徴的です。運動症状(パーキンソニズム)と非運動症状を呈し、症状は非対称性に始まることが多いとされています5

【頻度】

パーキンソン病の有病率は人口10万人当たり100-200人とされ、加齢とともに増加します¹。65歳以上では約1%の有病率で、平均発症年齢は60歳前後です。男女比は約1.5:1で男性にやや多く認められます²。2024年の最新データでは、世界的に有病率の増加傾向が報告されています³。

【症状】

主要運動症状として、安静時振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢反射障害の4つが挙げられます¹。安静時振戦は4-6Hzの「丸薬を丸める」ような振戦で、動作時に軽減します。筋強剛は歯車様強剛として認められ、無動・寡動は動作の開始困難や動作緩慢として現れます¹。非運動症状として、便秘、嗅覚障害、睡眠障害(REM睡眠行動異常症など)、自律神経症状、認知機能障害、うつ症状などがあり、運動症状に先行することも多いとされています²。

【検査】

パーキンソン病の診断は臨床症状に基づいて行い、Movement Disorder Society臨床診断基準(MDS-PD criteria)が用いられます¹。DaTスキャン(ドパミントランスポーターシンチグラフィ)により、線条体でのドパミン神経の変性を画像で確認できます¹。MRIでは、黒質の萎縮や鉄沈着を評価します。レボドパ反応性試験も診断の参考となります¹。2024年の最新研究では、αシヌクレイン検出法や眼球運動検査などの新しい診断マーカーの開発が進んでいます⁴。

【治療】

薬物療法の基本は、レボドパ/カルビドパ合剤による補充療法です4。ドパミンアゴニスト(プラミペキソール、ロピニロールなど)、MAO-B阻害薬(セレギリン、ラサギリン)、COMT阻害薬(エンタカポン)も使用されます¹。進行期には、wearing-off現象やジスキネジアなどの運動合併症に対して、薬剤調整や持続的ドパミン刺激療法(レボドパ持続経腸療法、アポモルヒネ持続皮下注射)を行います²。脳深部刺激療法(DBS)は、薬物治療抵抗性の運動症状や運動合併症に対する外科的治療として有効です²。2023-2024年の最新治療として、GLP-1受容体作動薬(エクセナチドなど)の神経保護効果や、αシヌクレイン免疫療法の臨床試験が進行中です⁵。

引用文献:
  1. パーキンソン病診療ガイドライン作成委員会. パーキンソン病診療ガイドライン2018. 医学書院, 2018.
  2. Stocchi F, Bravi D, Emmi A, Antonini A. Parkinson disease therapy: current strategies and future research priorities. Nat Rev Neurol. 2024;20(12):717-739.
  3. Zhu J, Cui Y, Zhang J, et al. Temporal trends in the prevalence of Parkinson's disease from 1980 to 2023: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2024;5(9):e615-e626.
  4. Culicetto L, Cardile D, Marafioti G, et al. Recent advances (2022–2024) in eye-tracking for Parkinson's disease: a promising tool for diagnosing and monitoring symptoms. Front Aging Neurosci. 2025;17:1534073.
  5. McFarthing K, Buff S, Rafaloff G, et al. Parkinson's disease drug therapies in the clinical trial pipeline: 2024 update. J Parkinsons Dis. 2024;14(2):363-394.
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