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脊髄小脳変性症

【概念】

脊髄小脳変性症(SCA:Spinocerebellar Ataxia)は、小脳・脳幹・脊髄の変性により運動失調を主症状とする神経変性疾患群です¹。遺伝性(脊髄小脳失調症)と非遺伝性(多系統萎縮症の小脳型など)に分類されます。遺伝性SCAsは現在40以上の病型が同定されており、日本ではSCA3、SCA6、SCA1の頻度が高いとされています¹。

【頻度】

脊髄小脳変性症の有病率は人口10万人当たり約5-7人とされています¹。日本では常染色体優性遺伝のSCAが約60%、多系統萎縮症小脳型が約30%、その他が10%を占めます。発症年齢は病型により異なり、SCA6は比較的遅発性(50-60歳代)、SCA3は中年期発症が多いとされています²。

【症状】

主症状は小脳性運動失調で、歩行失調、四肢失調、構音障害、眼球運動障害を呈します¹。病型により症状の特徴が異なり、SCA3では錐体外路症状やニューロパチーを、SCA6では純粋小脳症状を、SCA1では錐体路症状を合併することが多いとされています¹。進行により歩行困難、嚥下障害、呼吸障害を来し、日常生活動作の障害が生じます²。

【検査】

診断は臨床症状と家族歴、神経画像検査、遺伝子検査により行います¹。MRIでは小脳萎縮、脳幹萎縮を認めます。SPECT検査では小脳血流の低下を確認できます。確定診断には遺伝子検査が必要で、既知の遺伝子変異の検索を行います¹。Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)による運動失調の定量評価も重要です²

【治療】

現在のところ根治療法はなく、対症療法が中心となります¹。運動失調に対してはタルチレリン(TRH誘導体)、セロトニン再取り込み阻害薬が使用されることがあります。理学療法、作業療法、言語療法によるリハビリテーションが重要です¹。2024年の最新研究では、CAG repeat病に対するアンチセンス治療や、神経保護薬の臨床試験が進行中です³。症状に応じた個別的なアプローチと、QOL向上を目指した包括的ケアが重要とされています⁴。

引用文献:
  1. 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン作成委員会. 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018. 医学書院, 2018.
  2. Weber N, Buchholz M, Rädke A, et al. Factors influencing health-related quality of life of patients with spinocerebellar ataxia. Cerebellum. 2024;23(2):654-668.
  3. Coarelli G, Dubec-Fleury C, Petit E, et al. Longitudinal changes of clinical, imaging, and fluid biomarkers in preataxic and early ataxic spinocerebellar ataxia type 2 and 7 carriers. Neurology. 2024;102(7):e209749.
  4. Cunha Ganimi MCD, Couto CM, Ferreira AL, et al. Spinocerebellar Ataxia in Brazil: A Comprehensive Genotype–Phenotype Analysis. Cerebellum. 2024;23(4):1521-1534.
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